桜吹雪の中を猛スピードで走り抜けた。
川沿いの桜並木の下をはしっている道は、ただの国道の抜け道にすぎない。
約束のない再会の雨が降る:「桜吹雪を抜けて」
Arthur-Rimbaud3
北陸の桜は先日の日曜日にほぼ開花を見た。好天も相まって川縁の桜並木はそれこそ数え上げることが出来ないほどの群衆に埋まっていて、まるで虫が湧いたみたいな様相を見せていた。建ち並ぶ露店や子供達の嬌声の中、互いになんら関わりのない人々の集団にしか過ぎないのに私の視角に入ってくる顔は一様に緩んでいた。いわば通りすがりにしか過ぎない肉の塊、人称とも呼べない人々の存在の中で私の歩みは一種場違いな音をギシギシと立てていて、きっとそれは砕かれてゆく自分の音なのだと気づくまでたいした時間を取らせなかった。一種の救いがたい心の欠片でさえ焼尽させてしまう世界の現出の前で私は立たされているのだ。
孤独さえ砕かれてしまうことだってある。そのあとに残るものはなにかという問いに私は答えることが出来ない。
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