2004-06-30

おお、君は眩いくらい美しい

Arthur-Rimbaud2

聞き給え。この物語も数々の俺の凶器の一つなのだ。
俺は久しい以前から、世にありとある風景が己の掌中にあるのが自慢だった。
近代の詩や絵の大家らは、俺の眼には馬鹿馬鹿しかった。
    -地獄の季節(錯乱Ⅱ・言葉の錬金術、冒頭より抜粋)-
      Jean-Nicolas-Arthur-Rimbaud
           小林秀雄 訳


堀口大学の訳も美しいのだけれど、以下の部分に至りLacoste版に拠る小林訳の方が心に響く。


また見つかった、
   何が、永遠が、
   海と溶け合う太陽が。

もうボロで赤茶けてしまったこの文庫本を『海と溶け合う太陽』が見たいが故、新しく買い換えてしまった。

2004-06-25

Henry Miller


パリは売笑婦に似ている。遠くから見ると、男の魂をとろかすようであり、彼女を両腕に抱きしめるまで待ちきれぬほどだ。しかも、五分後には空虚感を味わい、自己嫌悪をおぼえる。だまされた思いだ。
      -TROPIC OF CANCER(北回帰線)-
          Henry Miller
          大久保康雄 訳


ヘンリー・ミラーは3人の女と出会った。とりわけアナイス・ニンの存在は大きかった。そして世に出たのである。


北回帰線 (新潮文庫)北回帰線 (新潮文庫)
Henry Miller

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2004-06-23

類的存在

Karl Heinrich Marx


動物はその生命活動と直接的に一つである。動物はその生命活動から自分を区別しない。動物とは生命活動なのである。人間は自分の生命活動そのものを、自分の意欲や自分の意識の対象にする。彼は意識している生命活動をもっている。〔人間は生命活動をもつものとして規定されるとしても〕それは人間が無媒介に融けあうような規定ではないのである。意識している生命活動は、動物的な生命活動から直接に人間を区別する。まさにこのことによってのみ、人間は一つの類的存在なのである。あるいは、人間がまさに一つの類的存在であるからこそ、彼は意識している存在なのである、すなわち、彼自身の生活が彼にとって対象なのである。ただこのゆえのみ、彼の活動は自由なる活動なのである。疎外された労働はこの関係を、人間が意識している存在であるからこそ、人間は彼の生命活動、彼の本質を、たんに彼の生存のための一手段とならせるというふうに、逆転させるのである。
     -経済学・哲学草稿(第一草稿 疎外された労働より抜粋)-
                     Karl Heinrich Marx
                    城塚 登・田中吉六 訳


カール・マルクスは人間は類的存在であると看破した。そして巨大なるヘーゲル哲学に挑む。ヘーゲル弁証法への深遠なる批判と止揚へ。


経済学・哲学草稿 (岩波文庫 白 124-2)経済学・哲学草稿 (岩波文庫 白 124-2)
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2004-06-22

盲者

スッタニパータ


人間のこの身体は不浄で、
悪臭を放ち、
(花や香を以て)まもられている。
種々の汚物が充満し、
ここかしこから流れ出ている。

このような身体を持ちながら、
自分を偉いものだと思い、
また他人を軽蔑するならば、
彼は盲者でなくて何だろう。

        -スッタニパータ(抜粋)-
            ブッダ
           中村 元訳


ゴータマ・ブッダ(釈尊)の入滅は紀元前383年と云われている。このスータニパータは南方仏典としてはもっとも古いものである。それだけにもっとも尊き師の言葉に近いものだと思われる。


ブッダのことば―スッタニパータ (岩波文庫)ブッダのことば―スッタニパータ (岩波文庫)
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2004-06-16

非知と無智

吉本隆明の極北

<わたし>たちが宗教を信じないのは、宗教的なもののなかに、相対的な存在にすぎないじぶんに目をつぶったまま絶対へ跳び超してゆく自己欺瞞を見てしまうからである。
      -最後の親鸞-
        吉本隆明


称名念仏の極北に佇んでいる親鸞に立ち向かう吉本隆明の姿に”思想”の原点を見る。他力本願の思想の涯に見えた孤高の世界。

最後の親鸞 (ちくま学芸文庫)最後の親鸞 (ちくま学芸文庫)

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2004-06-15

ブッダの悟り

Dhammapada


かの尊師・真人・正しく覚った人に敬礼したてまつる。
『真理のことば』

怒りを捨てよ。
慢心を除き去れ。
いかなる束縛をも超越せよ。
名称と形態とにこだわらず、無一物となった者は、苦悩に追われることがない。

     -ブッダ(Dhammapada)-
         中村 元訳


現象界の全てを捨て去ったときにみえるものは、煩悩から解き放たれた自分である、と云うことか。
法句経(パーリ文での大蔵経の一部)にはいつもはっとさせられる自分が見えてくる

ブッダの真理のことば・感興のことば (岩波文庫)ブッダの真理のことば・感興のことば (岩波文庫)
中村 元

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2004-06-14

佛国土

親鸞1


おほよそ大小聖人、一切善人、本願の嘉號をもておのれが善根とするがゆへに、信を生ずることあたはず。
佛智をさとらず。
かの因を建立せることを了知することあたはざるがゆへに、報土にいることなきなり。
      -親鸞-
  教行信証 (化身土巻より抜粋)
     金子大栄校訂


人すら自分を善と思うが故に信心が起こせず、佛の智慧を悟れないでいる。
従って真の佛国土にいけないのだ、と。
親鸞の他力本願の神髄は「念仏者」とはなにかを厳しく問うている。

教行信証 (岩波文庫)教行信証 (岩波文庫)

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2004-06-03

砂漠の商人

Arthur Rimbaud1


この土地はおさらばだ、何処へでも構わぬ。
志を立てた壮丁ら、俺達は、猛悪な哲学を持とう。
学識には文盲を、慰安には獄道を、歩み行くこの世には決裂を。
これこそ真の発展だ。
前進せよ、出発だ。

(デモクラシーより抜粋)
     - Jean-Nicolas-Arthur Rimbaud -
          小林秀雄 訳


「地獄の季節」ばかりではなく、ランボーには惹かれるものが多い。
まさに若くして天才であったのだろう。
そして、老いるのも早かった。

地獄の季節 (岩波文庫)地獄の季節 (岩波文庫)
J.N.A. Rimbaud

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