2008-08-17

metaphysical ”Nardis”part two

 ピアニストBill EvansにとってのベーシストScott Lafaroの存在はお互いが「高まり」を共有出来る無比の存在であった事は先程述べているところであるが、彼とのsessionはScottのあっけない交通事故死によって終わっている。時空間の恋人同士であった片方の「死」はある意味では無惨ではあるがエバンスにとっては彼との空間を止揚するmotifにもなったはずである。己を先行するベーシストを失ったEvansの取るべき道はたゆまぬ時間化度への進撃である。後日のピアノ・トリオとしてのピアニストであるBill Evansは孤高である。
 このNardisであるがRichie Beirach(Richard Beirach)が様々な位相で取り組んでいる。リッチィ・バイラークは1947年NYのブルックリンで生まれている。私とほぼ同年である。名前から推察すると北方ヨーロッパ系移民の血を引いているようにも思える。彼のBill Evansへのこだわりは彼のアルバム(discography)からも窺い知ることが出来る。ECMレーベルから発売されたリッチィの初リーダーアルバムEON(1974年11月NY)のなかでNardisはとりあげられている。楽器編成はRichie Beirach(P)Frank Tusa(B), Jeff Williams(Ds)のピアノ・トリオである。このトリオで翌年もう一枚(Methuselah)つくられている。が、目指しているところからするとEONのほうがより「内省的」であり3枚目となるSunday SongにおけるTusa(B)とデュオに至る方が自然のように思える。EONのNardisは意欲的であり挑戦的である。当然の事ながらコードやフレーズから感じられるものは眩いばかりの Nardisへの「愛」でありBill Evansへの切ない想いの咆吼のようだ。何度も何度も虚空に向かう「フレーズ:仮講線」はTusaのベースによって高められていく。それでも”失墜”していく様はおどろおどろしいまでのピアノ独特の空間を形創る。Evansが試みたように”憑依”され何かを超えようとするかのように、だ。そしてBeirachは美学的に云うならばNardisというabstract artを造形したのだ。

※このエントリィは2004-02-24に「はてなダイアリ」に書かれたものが転載されたものである。
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