2007-12-01

想像力の涯にみるもの



■埴谷雄高と想像的意識

眼球の片端をぐいと指先で押してみると、ものの像がぐらりと揺れ動き、斜めへぐっと膨らみもりあがってくる。それは滑らかな球面を或る方向へぐいと捻ってみるだけの実験で、つまり些細な角度の変化をもたらすだけの操作に過ぎないが、眼球をさらに激しく揺り動かしつづけていると、不動に据えついたこの世界の存在が物珍らしく見えてきて、やがては精神の位置さえ変わってくる。
・・・・・・・・・・・
    やがてはその意識が意識できよう。
    もしそれと名づけられるほどの意識が宇宙にあるとして、
    このきらめく光の変容を瞬きもせずに眺めつづけているとして。
   -意識(抜粋)-

 あまりにも有名な観念小説である。娼婦の部屋でひたすら眼球実験をおこなう男。同時代、フランスにおいてJean-Paul Sartreが「想像力の問題」を世に問う。そして埴谷は前人未踏の宇宙へ向かう。やがてそれは「死霊」となって死す。彼の中でそれは完成したのであろうか。
『愚民的想像力』
※この稿は2004-06-19にはてなダイアリに於いて書かれたものを転載しました。
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